第二次大戦期雑誌ミニチュアの作成

Making Miniature Magazines

現状最も容易に、かつリアルに自作出来るミニチュアは、「印刷物の縮小もの」である。
実物のタテ・ヨコ・厚みの情報と、表紙・裏表紙、場合によっては背表紙・中身の画像データがありさえすれば良い。

LIFE誌とYANK誌は約358mm×265mmであり、
LIFE誌はGoogle Booksのアーカイヴで全号全記事が閲覧可能である。

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↑1/35 LIFE誌。画像データからの縮小。

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↑1/35 YANK誌。雑誌実物からの縮小。

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第二次大戦期の読書について、以下のwebページ、論文、文献は必読。

・第二次大戦期のアメリカ軍、イギリス軍、ドイツ軍の読書を横断的に語った文献
ポール・ファッセル「第16章 ペーパーバックで名作を――戦時の読書」 『誰にも書けなかった戦争の現実』 P.353-386
(草思社、1997)

Paul Fussell, "Wartime, Understanding And Behavior In The Second World War" (Oxford University Press, 1989)
を翻訳したものが、草思社(1997)であるが、原著の写真が和訳本では一切掲載されていないため、原著との併読を推奨。

・第二次大戦期アメリカにおける「軍隊版」の概説
wikipedia: "Armed Services Edition"

・「軍隊版」の表紙が幾つか掲載されたカラー図版を含む日本語の書籍として、
・名作ぞろいの軍隊文庫」 『一億人の昭和史 日本占領 2 動き出した占領政策』(毎日新聞社、1980) P.16-17

・渡辺洋一先生の論文
「アメリカ「軍隊版」ペーパーバックと1940年代のアメリカ国民の読書嗜好」『文化論集第19号』(早稲田商学同攻会、2001.11)
(http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/6056/1/19_P1-34.pdf)

・渡辺洋一先生の翻訳による文献
・ピート スフリューデルス 『ペーパーバック大全 USA 1939‐1959』(晶文社、1992)

・第二次大戦期に撮影、公開された総天然色映画の中で、逐次刊行物=雑誌を読むアメリカ兵(を演ずるアメリカ人)が記録されているもので、
なおかつ現在パブリックドメイン映画DVDとして、安価に手に入れる事が可能なタイトルとしては、
「錨を上げて」Anchors Aweigh(1945)がある。
ジーン・ケリーがホセ・イトゥルビの事務所で読んでいるのは、月刊誌Esquireである。

・その他、アメリカ軍兵士が読んでいた出版物については、
Henri-Paul Enjames, "Army Service Forces Catalog, Government Issue Collector's Guide Vol.1"(Histoire & Collections, 2012)
P.236-241 "17-ARMY PUBLICATIONS" を参照。
例えば、当時の写真で良く見受けられるイタリア語、フランス語、ドイツ語の会話手帳はP.236に掲載されている。
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(1)1/35 LIFE誌の作成

戦時中のアメリカのグラフ雑誌で、現状最もミニチュア化する環境に恵まれているのは、"LIFE"である。
創刊号から全ての記事をグーグルブックスのアーカイヴで閲覧することが出来、サムネイル画像を利用して、好きな号の好きな記事を開いた状態で作ることが可能である。

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↑1943年7月19日号の表紙と裏表紙を写真用紙に出力。

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↑アナログな作業をする。まず切る。

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↑並べて貼る。

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↑紙に余白が出来たので、1943年11月1日号の表紙-裏表紙も貼る。

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↑セブンイレブンのカラーコピー機で1/35に縮小。

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↑ミニチュア実習の思い出の写真より。
1/35サイズに縮小されたLIFE誌ミニチュアがダーッと並んだ紙を切るモケログT君。

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↑LIFEは結構重厚な雑誌なので、1/35の場合、裏表の表紙と併せて普通紙6枚分の厚みで製本する。
紙の色は、パステル粉またはタミヤウェザリングマスターで表現する。
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↑1/35 LIFEをTamiya 35320-3に持たせたもの。

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↑1/35 LIFEの裏表紙広告にLUCKY STRIKEを合わせて持たせたSS戦車兵。

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↑経済原論テキストと、鈴木先生、岩波文庫「白鯨」は1/12。
LIFEは1/35。







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(2)1/48 LIFE誌の作成

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↑セブンイレブンのカラーコピー機で1/48に縮小。

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↑"製本"する。表紙-裏表紙を背で折って、紙を一枚はさんでのりづけする。

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↑余分を切る。

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↑フチを褐色がける。パステルを粉にしたものを筆で刷り込む。
タミヤウェザリングマスターでも同様の表現が出来る。

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↑1/48 LIFE使用例。Tamiya 61107に持たせる。





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(3)1/35 YANK誌の作成

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↑実物をセブンイレブンのカラーコピー機で25%までに縮小。
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↑切り貼りしてつなげる。

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↑スキャンして割り付け印刷で適度なサイズに縮小。
家庭用プリンターでの出力には写真用紙を用いる。

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↑セブンイレブンのカラーコピー機で1/35サイズに縮小。

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↑ノリづけ製本する。

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↑パステル粉、またはタミヤウェザリングマスター、Aセットのサンドを側面に擦りつけて、褐色がからせる。

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Tamiya 35230-A&Rに持たせる。

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(4)雑誌実物のディテール

"LIFE" (1942.11.30) 356mm×268mm
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↑表紙。
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↑裏表紙。
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↑ホッチキス止め製本。止め位置は表紙側に寄っている。
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↑側面。経年劣化。
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↑地側のホッチキス止め位置。
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↑天側のホッチキス止め位置。
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"LIFE" (1944.5.22) 355mm×268mm

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↑表紙。
この号は、「ニューギニアで拾われてアメリカ女性に贈られた日本兵の頭骨」の記事が掲載されていて、
時に戦時下アメリカの日本兵イメージを語るときに引用される*。
模型的には、D-Day+のアメリカ兵が持っていてもおかしくない小道具として有用であろう。

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(註)
*橋川文三 『黄禍物語』 岩波現代文庫、2000, P.242~243
(橋川文三『黄禍物語』 筑摩書房、1976, P.202~203)では、「信濃毎日新聞」昭和19年8月4日記事、
「米に『首狩時代』再現/独外務省 髑髏写真を披露」が引用されていて、
外国新聞記者団会見で、その記事が紹介されてアメリカ批判のネタに使われたらしいことがわかるのだが、
しかし、1944年5月22日号の記事を8月4日に取り上げるとは、やや遅くはないだろうか。

なお、これら戦時中のLIFEと同時代の、日本のグラフ雑誌の比較研究としては、
井上祐子先生の『戦時グラフ雑誌の宣伝戦 十五年戦争下の「日本」イメージ』 青弓社,2009
は必読。
個人的には、『ジャワ・バルー』の誌面が多く掲載されているのにグッと来ました。
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↑裏表紙。

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↑厚みはこの程度。

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↑ホッチキスは少し錆びている。

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↑ホッチキス止めの位置には個体差があるらしい。
Nov. 30, 1942とのホッチキス位置比較。

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↑天側のホッチキス位置。
止める位置には個体差があるが、地が地に寄れば天も天に寄って、バランスを取って製本されているらしいことが見て取れる。


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"LIFE" (1944.10.9) 358mm×265mm

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"YANK" (1944.9.8) 358mm×266mm
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↑表紙。
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↑裏表紙。この雑誌を初めて実見して、驚いたのは、同誌の定期購読以外に商品広告が全くない点。
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↑ホッチキス止めの位置は側面ではなく、端のほう。
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↑上下の二点止め。
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↑ホッチキスは真ん中のページまで貫かれて製本されている。
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↑"LIFE"(1944.5.22)との比較。YANK誌は縦方向に少しだけ長い。
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↑横はLIFE誌の方がほんの少し長い。
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↑厚みはLIFE誌の方がだいぶ厚い。
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↑ホッチキスはYANK誌の方が少し長い。


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(5)市販されている1/35第二次大戦期雑誌ミニチュア

市販されている1/35第二次大戦期雑誌ミニチュアキットのうち、印刷の精度が一番高いのはplus Model社のものだと思います。

(1)plus Model社の"Signal"誌

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↑plus model 165 "German Newspapers & Magazines WWⅡ 1/35

このキットは、Tamiya 49726として、イベント限定商品としてもリリースされています。

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↑過日製作したLIFEミニチュアとの比較。
plus modelのものは綺麗に印刷されていて、拡大してもシャープでグッド。

しかし、早稲田大学図書館蔵の英語版"Signal"誌*を調べた限りでは、plus Model社の同誌は表紙と裏表紙の組み合わせが実物と異なっているように思われます。
"Signal"誌の裏表紙に「女性と虫」のイラスト("So that's spring, is it?")が描かれている号は、1941年3月第2号=1941年のNo.6であり、
表紙は「雪中にも関わらずエクササイズする女性たち」(KdF physical exercises in the snow as well)の写真であって、
plus model社の同誌表紙には該当する写真がありません。


(2)Dioart社の"Signal"誌

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↑DIOART #149 "GERMAN WWⅡ MAGAZINE "SIGNAL". 1941"
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↑plus modelに比べてDIOARTは印刷が荒く、サイズも大きめ。裏表紙に至っては赤一色のみ。
Dioart社の"Signal"誌は、商品としてはやや粗すぎる印象。家庭用のインクジェットプリンターでこれよりも良い物を作れるレベルだとお見受けいたします。


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(註)
*早稲田大学図書館雑誌バックナンバー書庫"Signal"英語版所蔵状況

"Sigal"誌は、ドイツ語のみならず各国語版が刊行されていた。
早稲田大学中央図書館の雑誌バックナンバー書庫には英語版のSignai誌が21冊収められており、
1940年の号と1941年の号で2巻に分けて製本されている。
しかし、1941年4月第1号=1941.No.7が、1940年の号と製本時に誤認されたようで、
同号は1巻目=1940年のNo.7として収められている点に注意が必要である。

 1940 No.5
No.6
No.8 (1940.7.25)
No.9 (1940.8.10)
No.10(1940.8.25)
No.11(1940.8.25)
No.12(1940.9 2nd)
No.13(1940.10.1st)
No.14(1940.10.2nd)
No.15(1940.11.1st)
No.16(1940.11.2nd)
No.17(1940.12)

1941 No.1(1941.1.1st)
No.2(1941.1.2nd)
No.3(1941.2.1st)
No.4(1941.2.2nd)
No.5(1941.3.1st)
No.6(1941.3.2nd)
No.7(1941.4.1st)→1巻目のNo.7として製本されている。1940年7月号と誤認されて製本されている点に注意。
No.9(1941.5.1st)
No.10(1941.5.2nd)

なお、Signal誌を読むシーンが登場する映画としては、
「ブラックブック」 Zwartboek(2006)がある。
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by tokyomonogatari | 2012-03-14 21:50 | ◎小道具 | Comments(0)
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