Tamiya 35230-A&R [ドラゴンワゴンの座るアメリカ兵、或いはMM30年目にしての読書解放]

MMシリーズ30年目の1998年は、1/35MM世界の住人たちにとっては読書解放年であった。

タミヤ社の1/35フィギュアで、逐次刊行物=雑誌を読むポオズが現状唯一与えられているのが、
35230-A&R*の、Aの枠内で8,9,11,15のパーツに分割された、座るアメリカ兵である。

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↑8
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↑15
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↑9,11

このフィギュアは過去三度登場しており、
1998年12月リリースの35230-A&Rを初出とし、
2000年7月リリースの35244-A
2010年12月リリースの35312-A
と、その容貌を変えてアメリカ軍車輌のフィギュアとして与えられてきた。

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↑Tamiya 35230-A&R

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Tamiya 35244-A

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Tamiya 35312-A



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読む行為が描写されたフィギュアが、三度繰り返してキットに含まれている、というのは異例である。
また、35312-Aに至っては、雑誌を持つ腕は不要部品として説明書に書かれていながら、
同パーツで行われた"摘み取り"の対象となっておらず、読書行為がフィギュアに与え得る選択肢として残されていたのが感動的であった。

ここで第二次大戦期アメリカにおける読書、について少し確認しておくと、
The Victory Books Campaignや、Armed Service Editionの刊行など、
戦場における読書行為が見直された時代であったとも言え、
MMシリーズで読書するアメリカ兵が三度も重ねて描かれているのは、その時代の空気にも相応しい身振りと言えよう。

三度、雑誌を読むポオズを与えられていながら、Tamiya社が彼らに雑誌を実際に供給したのは、
35230と35244のみであり、35312では雑誌が説明書に印刷される事が無かった。

しかし、これは嘆くに値する事ではなく、元来35230と35244の説明書で印刷されている雑誌、
アメリカ軍刊行の週刊雑誌"YANK"は、実物とは異なり、モノクロ印刷にとどまっている*。
実物の"YANK"誌は、同時代のグラフ雑誌に広く見受けられるスタイル、モノクロ写真に赤印刷題字白抜きであって、
つまりはTamiya社の1/35"YANK"誌では赤色が不在である以上、結局は自作するのが最善なのである。

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(註)
*なお、表紙のチュニジア戦線でアメリカ軍に捕獲されたタイガーⅠの写真から、
Tamiya社によってミニチュア化されたのはYANK誌の1944年1月21日号であることが判る。
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ありがたいことに、"YANK"誌の表紙画像はweb上で拾う事が容易である。
問題は裏表紙と中の記事画像を見かけることが稀有であること、なのであるが、
拘らないならば適当な画像を繋げて作ればよいし、
拘るならば、実物を手に入れて縮小するのがベストな方法である。

実物を手に入れるまでの情熱は抱けないが、表紙と裏表紙、そして中身記事の対応が完全な、
第二次大戦期の雑誌を作りたいならば、"LIFE"誌を製作の対象にすれば良い。
"LIFE"誌はかつては表紙画像のみ、出版社HPで公開されていたのであるが、
今日ではグーグルブックスのアーカイヴで創刊号から全記事が閲覧可能、
という驚異的な状況が、逐次刊行物研究者のみならず、模型製作者の前にも開かれている。

実物の"YANK"及び"LIFE"のディテールと、1/35ミニチュア化の方法については、tokyomonogatari,2012.3.14で既に示した。

Tamiya 35230-A&Rに、1/35縮小した"YANK"誌を持たせる。
ヘッドはTamiya 35228-35234-Bを移植した。

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M8グレイハウンドの砲塔で雑誌を読むアメリカ兵。
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腕を組んで座るポオズも貴重である。
ヘッドはTamiya 35190-Fを用いた。

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(アメリカ兵と読書を巡る教養)
以下のwebページ、論文、文献は必読。

第二次大戦期の「軍隊版」
wikipedia: "Armed Services Edition"

渡辺洋一先生の論文
・「アメリカ「軍隊版」ペーパーバックと1940年代のアメリカ国民の読書嗜好」『文化論集第19号』(早稲田商学同攻会、2001.11)
(http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/6056/1/19_P1-34.pdf)

書籍としては、渡辺洋一先生が翻訳された
・ピート スフリューデルス 『ペーパーバック大全 USA 1939‐1959』(晶文社、1992)

「軍隊版」の表紙が幾つか掲載されたカラー図版を含む書籍としては、
・「名作ぞろいの軍隊文庫」 『一億人の昭和史 日本占領 2 動き出した占領政策』(毎日新聞社、1980) P.16-17

第二次大戦期のアメリカ軍、イギリス軍、ドイツ軍の読書を横断的に語った文献として、
・「第16章 ペーパーバックで名作を――戦時の読書」 『誰にも書けなかった戦争の現実』 P.353-386
(草思社、1997)

・第二次大戦期に撮影、公開された総天然色映画の中で、逐次刊行物=雑誌を読むアメリカ兵(を演ずるアメリカ人)が記録されているもので、
なおかつ現在パブリックドメイン映画DVDとして、安価に手に入れる事が可能なタイトルとしては、
「錨を上げて」Anchors Aweigh(1945)がある。
ジーン・ケリーがホセ・イトゥルビの事務所で読んでいるのは、月刊誌Esquireである。

・その他、アメリカ軍兵士が読んでいた出版物については、
Henri-Paul Enjames, "Army Service Forces Catalog, Government Issue Collector's Guide Vol.1", P.236-241 "17-ARMY PUBLICATIONS" を参照。
例えば、当時の写真で良く見受けられるイタリア語、フランス語、ドイツ語の会話手帳はP.236に掲載されている。
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Tamiya 35230-A&Rは、一枚504円。



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by tokyomonogatari | 2012-03-31 12:05 | U.S.A. | Comments(0)
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