Tamiya 12641は、2011年に発売された兵隊ミニチュア関係のものの中で、暫定最高のものだとお見受けいたします。
1968年9月に「ドイツ戦車兵セット」(35001)をリリースしたのが、 Tamiya社におけるMMシリーズの始まりであった、というのは、このブログで今更語るまでもない事でありましょうけれど 大西将美画伯によって描かれた、その35001の箱絵からパンツァージャケットに記章類を付けた武装親衛隊戦車兵がセンターに登場していながら、 武装親衛隊の髑髏章、襟章、袖章などの記章類はデカールとして、この43年の長きに渡って、 Tamiya社から与えられることが無かったのです。* 武装親衛隊記章類は、Verlinden Productions社のものだと襟章も袖章も大きめで、 Lion Roar社の袖章は、一枚に印刷された種類が多くて良いのだけれども、やや字体が堅い印象。 他にも武装親衛隊階級章類を出しているメーカーが幾つかございますが、 とりわけArcher Fine Transfers社のものが私見では最良のサイズと質であり、なおかつ、 Calvin Tan氏がその著作"Modelling Waffen-SS Figures"(Osprey, 2005)で使用しているのも同社のドライデカールでした。 その超絶技巧の塗装とマッチする水準の解像度で印刷された階級章や袖章であるならば、ぜひ欲しいと、 私はそれを求め、某模型店で売られている事を知り、そのドライデカール一枚二千円越えという価格に、震えつつ購入したものです。 後にHobby Link Japan社が価格をその約半分程度にして販売するようになり、だいぶSS記章類の状況は改善されたようにも思われたのですけれど、 いよいよTamiya社から武装親衛隊階級章が出ると知り、 東京の某模型店でニュルンベルクで発表された新商品の展示会があった時には、 そのガラス越しにそのデカールばかりを眺め、袖章はどこの師団が入っているのか、解読しようと努めたのですが、 デカールと私の眼球との距離が50センチ以上あり、結局読みとること能わず、 新製品情報の図版で示されていたDas Reich師団以外は、どこの師団の袖章が入るのかが、この数ヶ月間、私の関心事でございました。 Das Reich師団の袖章は、35001の大西画伯の絵の戦車兵が1968年に巻いており、 ようやく、43年越しに彼に与えられるべき袖章が与えられる形になり、おめでとう35001と、私は心の中で密かに彼に祝福を送っていたのです。 しかし、他にどの師団が入るのかは、少なくともこの若輩者には、その展示の時点では判らなかったのです。 今、実物を手にしてみて、ダス・ライヒ師団を始め、トーテンコプフ師団、ランゲマルク師団、ノルトランド師団、ドイッチェランド連隊のSS袖章が含まれている事が判明した次第ですが、 "LAH"と"HJ"は、やはり、回避なさったとお見受けし、その辺りは、Archer Fine Transfers社のドライデカールに頼ることになりそうです。 ともあれ、これでようやく、武装親衛隊とアフリカ軍団袖章のデカールが、町の普通の模型屋さんにて、 この価格で購入できる形となったのは、43年のMMフィギュア史において、これ以上に無いほどに、 革命的な、あまりに革命的な事象、に他ならない、と、私は思うのです。 ここまで書いて読み返してみて、袖章の事ばかり語っているのに気付いたのですが、 筆で書くのに激しく難のある袖章の文字を、綺麗に印刷されたデカールで解決していること以上に、 フィギュア的に嬉しい事はないと、やはり私は思いますし、 12625の2008年革命に次ぐ、12641の2011年革命が来たというこの状況を、 リアルタイムで経験できたこと、そのことこそが、私は嬉しくて仕方がないのです。 ----------------------------------------------------------------- (註) *武装親衛隊のヘルメットワッペンは70年代に発売されたドイツ軍キットの幾つかに付属。 ヘルメットワッペンのサイズについては、拙稿(2011.1.26)を参照。 武装親衛隊のヘルメットワッペンのサイズに範囲をしぼって大小関係を示せば、 12641<35023<35016=35050である。 -------------------------------------------------------------------- 赤、というのは、MM史上稀有な事例でございましょう。 フィギュアはサイズ差が激しいために、大小あるのは有難いのです。 それこそ貪欲に理想を申し上げれば、全ての記章類に大小が欲しいところです。 ヘルメット左側の鍵十字は入っていない。しかし、アンドリュー・スティーヴン&ピーター・アモーディオ(1993)**P.39に、 「鍵十字の盾章は1940年3月より外すように命じられ、ほぼ完全に姿を消した」 とあって、大戦初期以外であれば、ルーン文字SS盾章のみでも良いらしい。 なお、Tamiya 35196の箱絵では、ルーン文字SS盾章のワッペンが剥がれたような描写がなされている。 ----------------------------------------------- **アンドリュー・スティーヴン&ピーター・アモーディオ(著)、上田信(監訳)、北島護(訳) 『ミリタリー・ユニフォーム2 ドイツ武装親衛隊軍装ガイド』(並木書房、1993) なお、130,131,132は、幾つかの国ではカットされる模様で、その為の規制カット線があるのにも注目である。 ニュルンベルクトイショーの際には、この部分がカットされたものが展示されていた。 参照→tamiyablog 2011.2.3記事。 ------------------------------------------------ ------------------------------------------------- ***袖章は、袖口章、カフタイトル、アームバンドとも言い、軍装で最も呼称が分かれるモノかもしれない。 Tamiya 12641の説明書では、アームバンドの呼称が採られている。 ------------------------------------------------- 12625で野戦憲兵徽章が与えられながら、袖章が存在しなかったそのやきもき感はかなり解消されました。 されど、単純な赤丸のもの****ではない、野戦憲兵マーク入りのトラフィックバトンを表現する場合、 Feldgendarmerie袖章のデカールと同程度の解像度に、どうやって持っていくか、という課題は未だに積み残しの感もあります。 ------------------------------------------------------------- ****Tamiya 35241のトラフィックバトンの赤丸部に対する一つの解法として、 78019デカールを用いるという方法がある→拙稿(2010.8.6)参照。 ------------------------------------------------------------- Osprey本をモケログT君に貸したままなので詳述出来ず。 -------------------------------------------------------------------------------------- 設問 2011年4月に発売された、Tamiya 12641デカールには、第二次大戦初期、武装親衛隊のヘルメット右側のSSのルーン文字が描かれた盾章は含まれているものの、 左側につけられた鍵十字の盾章が含まれていなかった。この鍵十字盾章は大戦初期に見受けられるもので、後にほとんど見受けられなくなったとする文献もあるが、 大戦初期或いはそれ以前の武装親衛隊兵士を模型において表象する場合、右側のSS盾章のみでは不十分である。 この問題に対する処方箋を示せ。 回答 (tokyomonogatari, 2011) 70年代までにリリースされたTamiya社MMシリーズのドイツ軍フィギュア、或いは車輌関係のキットにおいては、 その多くにドイツ軍ヘルメットワッペンのデカールを含んでいた。また、現行のキットにおいてもその時代から販売されているキットにはそれが含まれているのは周知の事であろう。 しかしながら、そのデカールにおける描写の差異、サイズ差については、「模型慕情」の拙稿以外でそれに触れている先行研究は私の知る限りでは存在しない。 本答案ではまず、一章として、ヘルメットワッペンを含むデカールのうち、現在でも購入可能性が高いものを全て示し、 二章では、陸軍の左用、及び空軍の左用のワッペンを示す。設問ではそれが問われていないが、 陸軍、空軍の左用は、最もその描写に変化が見受けられるために、この際にそれらも合わせて示しておきたい。 三章では、ヘルメットワッペンのサイズ差を示す。 そして四章では、鍵十字盾章の描写の差異を示し、次に改めてサイズ差を示すことで、設問に対する回答としたい。 以下書き途中。 余裕のある時に書きます。 一章: Tamiya社1/35MMシリーズにおける、ドイツ軍ヘルメットワッペンデカール (a)フィギュアキットのヘルメットワッペンデカール 35030のデカールは、突撃・機関銃・進撃の70年代ドイツ兵群像シリーズに共通して付属。 そのパーツコードから、以下では1403016 decalとする。 1403016 decal は、一枚126円。 なお、以下に示したデカールそれぞれの価格は、私が購入した時点でのものである。 (b)車輌キットのヘルメットワッペンデカール 一枚126円。 一枚178円。 一枚126円。 一枚126円。 一枚126円。 一枚126円。 一枚126円。 一枚178円。 二章: 陸軍と空軍の左側用ワッペンの描写の差異 陸軍の左側用ワッペンとは、かぶる人本人の左側頭部に位置する鷲の盾章である。 空軍の左側用ワッペンとは、かぶる人本人の左側頭部に位置する鷲章のことである。 この二つのワッペンには、それぞれのデカールごとに描写の差異或いは解像度の差異が大きい。 なお、陸軍空軍ともに、右側用ワッペンは、ドイツ三色章の盾章である。 盾章の輪郭線の形状の差異とサイズの差異はあるが、描写には大差がない。 (2-1)陸軍左側用ワッペン (2-2)空軍左側用ワッペン 三章: ヘルメットワッペンのサイズ差 1403016 decal<35017 decal<35002 decal=35016 decal 35020 decal<1403016 decal<35017 decal<35002 decal=35016 decal 35020 decal<1403016 decal<35023 (old) decal<35023 (new) decal<35017 decal<35002 decal=35016 decal 35020 decal<35029 decal<1403016 decal<35023 (old) decal<35023 (new) decal<35017 decal<35002 decal=35016 decal 自分への課題→35023 oldと1403016の大小関係が怪しい。 四章: 武装親衛隊鍵十字盾章ヘルメットワッペン
by tokyomonogatari
| 2011-04-23 01:31
| デカール節
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