Tamiya 35314 [ドイツアフリカ軍団歩兵セット(2011)]

Tamiya 35314を眺めるにあたって、最小限の教養程度に、
Tamiya社MMシリーズにおける1/35ドイツアフリカ軍団兵士像のリリース小史と変遷を復習しておこう。

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・70年代 "MM黄金期"
1971年5月の35008が、MMシリーズにおけるDAKフィギュアの祖である。
同年6月には、35009として、35008を同梱した上で、初のDAK戦車兵フィギュアである、35009-figure が登場。
アフリカコープスかアフリカコーアかの発音・表記問題という興味深い事例ををMM史に刻んだのは、
1974年5月の35037。
MM史において、最も年間のリリース数が多かった年は、1975年であり、その数は28である。
7月に発売された35062-Aは、2003年9月発売の35268-Aとして未だに現役。
造形的には70年代のフレイヴァ―が漂っているものの、そのポオズは今日でも珠玉。
同年10月の35074の"トッセトンテ"は半ズボンを履いて座るドイツ兵下半身として貴重であった。
1979年9月、MM黄金期と称される70年代のドイツ軍キットとして最後に発売された、35113-Zは、
同時に70年代最後のドイツ兵フィギュアの位置を占め、2011年4月には数年ぶりにスポット再販でカムバックした。


・80年代 "MM冬の時代"
冬の80年代、ドイツアフリカ軍団のフィギュアは、35118(1980.9)のロンメル元帥のみであるが、
このロンメル元帥は基本的に35113と同じものである。
結局、80年代にはドイツアフリカ軍団兵士フィギュアの完全新規のリリースは皆無であった。


・90年代 "MM再興期"
35227-G(1998.5)は、35009以来27年ぶりのドイツアフリカ軍団戦車兵であるのみならず、久しぶりのドイツアフリカ軍団兵士であった。
35238-C(1999.9)は、半ズボンを履いた直立像として35009以来28年ぶりであった。
なお、35238-Cの胴体は35305-X&Y(2009.12)として後に流用されている。


・ゼロ年代 "MMヴィネタイゼーション&アフリカナイゼーション・エイジ"以降
ゼロ年代のMMシリーズには、ヴィネット向けリメイク(Vignettization)と同時にアフリカ化(Africanization)の傾向があった。
アフリカ軍団フィギュアの黄金期、或いは"本馬氏の時代"であると捉える事も出来よう。
88mm砲のアフリカ戦線版リメイクのフィギュア、35283-Z(2006.7)、
Sd.Kfz.222のアフリカ戦線版リメイクの35286-X(2007.9)、Ⅲ号戦車N型の戦車長、35290-F(2008.3)、
8輪装甲車の35297-V&Wと、本馬幸雄氏原型と推断されるアフリカ軍団兵士が続いたのである。
しかしながら、ゼロ年代末の、35304-Zは、明らかに東欧系の造形と成型ぶりであった。
35305-X&Y(2009.12)は、本馬氏でも東欧系の造形でもなく、そのヘッドの造形からすれば、日本人I氏の造形であると推測される。
35304-Z(2009.12)の先行例と、今回発売された35314(2011.4)を見れば、本馬氏とI氏の日本人原型師によるものから、
東欧系原型師へとアフリカ軍団兵士造形も移行しそうな流れの中にある事は、Tamiya社の最近のフィギュアを見れば容易に推測可能であろう。

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Tamiya 35314, German Africa Corps Infantry Set

この像容に、35298(2009.3)以降の東欧系造形の傾向を見いだせないはずがなく、
そのシール付き袋というパッケージングからも、東欧のそれであることが十分過ぎるほどにシグナリングされており、
パーツ番号が付記されておらず、TAMIYAの文字もマークも、普段のそれとは風合いが若干異なり、
中央が、"リング"を成しておらず、断ち切った跡が残っていることからも、
東欧的な、あまりに東欧的なあり方でまとまっているのが、
35298(2009.3)であり、35302-Z(2009.6)であり、35304-Z(2009.12)であり、35306(2009.11)であり、35311(2010.11)であり、
そしてこの、35314であるというのは、自明性を極め過ぎていて、
敢えて外国で出版されている雑誌での指摘を引用しつつ、それを指摘するまでもないことであろう。

どこの造形であろうが、どこの成型であろうが、どこのパッケージングであろうが、
少なくとも私においては、それらはさしたる問題ではなく、像容が素敵であればそれで良く、造形が美しければそれで良いのであるけれど、
この35314、35298(2009.3)以降の東欧系のそれらの中で、キットとして最高傑作だとお見受けいたしますし、
このキットで、何よりも感動的であったのは、雑誌広告の、そしてパッケージ裏の完成見本の質の高さである。

Tamiya社のMM広告における完成見本のフィギュログラフィーの中で、最高傑作は、
私見では35240と35241を同時に配した広告(2000)*の、ヴィネット仕立ての35241だと思っていて、
それは平野義高氏による作例であると推断されるのだけれども、それに次ぐ、傑作が、
今回の35314の広告の完成見本だと思う。

東京の某模型店に置かれている完成見本も、他のものにも増して塗装の質が高く、
Tamiya社が35314に込めた気合いが覗え、MMフィギュアの今後にもまた、期待せざるを得ないのである。

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(註)
*『アーマーモデリング』2000.4(Vol.20)裏表紙広告
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Tamiya 35314を眺めるにあたって、事前に眺めておかねばならぬのは、旧作である35008(1971.5)である。
35008よりも一人増え、全員が長ズボンを履いたのは良いとして、40年後のリメイクの今回、
全員が袖を下ろしているのもまた、興味深い読みの可能性を与えてくれるフィギュアキット、とも捉える事が出来るであろう。

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※ズボン側面の縫製線

ズボン側面の縫い目の表現には、一本線で表現するものと、二本線で表現するものとに大別され、防寒ズボンでは後者で表現する傾向がある。
Tamiya社のフィギュアが履いているズボンにおいては、縫い目が無いか**、或いは一本線であるか、のどちらかである傾向にあるのだが、
今回は明確に一本線と二本線が混在している点にも注目である。

そしてズボンの縫い目は、外側と内側に彫る場合と、外側のみ彫る場合とがあって、
Dragon社では脚を左右に分割するのが一般的であることもあって、前者が多数を占め、
後者はやや少数派なのであるけれど、Tamiya 35314では5人とも後者が採られ、外側のみに縫い目が彫られている。


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(註)
**身体の前後に分けて型を取り、両脚或いはそれを含む胴体を一体で成型する場合にこの傾向がある事は自明である。
しかしながら、脚を左右に分割しつつも縫い目が彫られていない事例も存在する点を留意。
(ex.Tamiya 35214)
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↑Dragon社も、Tristar社も、Trumpeter社もドイツ軍34年式弾薬箱の面積の狭い方の側面のディテールを表現している中、
Tamiya社ではMM史43年の歴史において未だに表現された事が無い。
※参照→2006.12.19記事
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by tokyomonogatari | 2011-04-27 02:54 | Germany | Comments(0)
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