Tamiya 35320 [ドイツ野戦憲兵セット、或いは43年間の静止からの解放、そして読書]

Tamiya 35320, WWⅡ German Field Military Police Set

(A)Tamiya社MMにおける"歩くドイツ兵史"の一大転換点としての35320

Tamiya 35320を眺めるにあたって、
まずは、Tamiya社1/35MMシリーズの歩くドイツ兵の流れを復習しておこう*。

(1)1969年7月 35002のM36/40野戦服を着てブーツを履いて歩いた彼がMM史上初の歩くドイツ兵として登場。
(2)1972年6月 35016でBMWサイドカーの傍を歩くオーバーコートのふたりが登場。オーバーコートを着て歩くドイツ兵は、今日でもMMシリーズ唯一の存在である。
1952年生まれの楽八氏は、35016を、
「厳しい冬将軍の凍えるような寒さや敗走する兵士の絶望感といったものを見事に演じ切り見る者に感動を与えたMMシリーズの中でもアカデミー賞クラスの名フィギュア」**と評している。
(3)1973年8月 35029でケッテンクラートの傍を歩くM36/40野戦服×レギンススタイルのふたりが登場。
(4)1974年5月 35037でドイツアフリカ軍団歩兵に初めて歩きポオズが与えられる。
(5)1994年12月 35184で20年ぶりに歩くドイツ兵が登場。箱の中の兵士像全てが歩いたのも初の事で、M43野戦服×レギンススタイルの兵士に歩きポオズが与えられたのも初めてであった。
後の35204がアクセサリーとして与えられ、新規独立小火器・装備品ランナーによる"95年体制"***に至る端緒でもある。
(6)2003年 1/16→1/35三部作****の一作目として、89621で歩く機関銃手が登場。ただし限定白箱である。
(7)2011年7月 35320で乗馬ズボンを履いた将校的身なりのドイツ兵がMMシリーズ43年目にして、初めて歩いた。

繰り返しになるが、将校的身なり=将校用バックルに乗馬ズボンが与えられて歩くドイツ兵が、
Tamiya社のMMシリーズに登場するというのは初めての事であり、彼の登場まではMMシリーズ43年間*****の長きに渡って、
将校には指差しか静観か双眼鏡持ちかの静的なポーズが与えられ続けてきたのである。

過去の武装親衛隊忌避から一転したように見えるTamiya 12641による襟章・肩章・袖章の授与、
そして今回は将校に歩くことを許可するなど、MMシリーズは43年目にして小さな革命状態にあると私は思うのだ。

2011年7月、35320の登場でもって、ようやく将校はその一歩を踏み出し始めた。次に歩くことが望まれるのは、
戦車搭乗服を着た戦車兵と、防寒アノラックを着た兵士、そして迷彩スモックを着た兵士である。
この三種の身なりは、EE時代=East European 時代="東欧的なフィギュア"が供給される時代に突入してから、
未だに与えられていない身なりであるし、現在の力量の"東欧的な"戦車搭乗服を着た立像は、
襟がシャープな形で成型され、そのデザインが冴えそうなこともあって、
まずは歩かなくとも、見てみたいアイテムでもある。




(B)Tamiya社ミリタリーフィギュアにおける"読書史"から見た35320

35320には、冊子を読む兵士が1人いるが、そんな彼こそは、Tamiya社MM史上初の冊子体のテクストを読むドイツ兵なのである。

過去記事で何度か示したことであるが、アメリカ軍発行の雑誌"YANK"を座って読んでいる35230/35244-A******が、MM史上初めて読書のポオズが与えられた兵士であった。
読書に近縁の行為に目を転じて、板状のものに書類或いは地図を置いたものに目を落としているポオズのドイツ兵としては、
35073(1975.10)の将校と、35202(1996.3)のオットー・カリウスと戦友たちの先行二例があるが、
35320で初めて冊子体のテクストを読むドイツ兵が現れた点には注目である。
レクラム文庫に差し替える事も、アメリカ軍からの戦利品としての「軍隊版」*******を読ませることも、
容易なポオズが与えられているフィギュアの登場により、情景模型中の1/35の兵隊における読書率が、
少しは向上するのではないかと、(そしてメガネのエッチングがTamiya社から出る事になったりはしないだろうかと)私は期待しているのである。



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(註)
*2011.6.9記事を書き改めたのが本稿の(A)である。
無論、本稿でも戦闘時に与えられる一歩踏み出したポオズではなく、非戦闘時にすたすた歩くポオズのものを対象としている。

**『パンツァーグラフ!』 12号(2008.春号) p.3

***Yパーツとして独立して与えられる形式の、フィギュアキットでの小火器・装備品付与のシステム。
ドイツ軍のY二種、アメリカ軍のY一種が揃った年が95年であることから、私は「95年体制」と呼称。

****896218962989641のこと。

*****M36スタイルのドイツ軍将校のMMシリーズでの初登場は、
35003(1970.5)であるから、同様の服装のフィギュアのみを議論の対象にするならば、41年間とすべきである。
ここでは、MM史上初であったことを重視して、43年間としている。

******35230のパーツとしてはAとRが繋がった形で、35244のパーツとしてはA単体で注文出来る。

*******「軍隊版」について知るに当たっては、渡辺洋一先生の論文は必読。
「アメリカ「軍隊版」ペーパーバックと1940年代のアメリカ国民の読書嗜好」『文化論集第19号』(早稲田商学同攻会、2001.11)
(http://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/6056/1/19_P1-34.pdf)
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(1)Tamiya 35320-1 Officer A

パーツの合いは極めて良好。袖口と襟口を開口、ズボンの内側に縫い目を入れて、
後はスッと流し込み接着剤を差してすらすら組めば良いと思います。

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Tamiya 35320-1 "Hornetized" Ver.
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↑Hornetヘッドのうち、あなたの最も好きなアタマを一つ挙げよと問われれば、HH-13-5と、このHH-11-5の間で悩むことになりそうです。
どちらのヘッドも、Hornetの平均的サイズと比較した時にやや小さめで、
少し小ぶりのインジェクションフィギュアとの相性も良く、何かと使えるヘッドであり、
それぞれ20個ほど欲しいところなのです。
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↑Tristar 35006のドイツ国防軍将校帽を選択。
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ざっくり組んだTamiya 35320-1を本組みする過程。
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↑手の軸と首の軸を適度に短くする。
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↑ヘッドと将校帽をエポキシパテで隙間を埋めつつ接着。
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↑エポキシパテで手首を盛る。
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↑袖口に挿し込む。これを後に削り、整える。
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↑エポキシパテで首を盛る。
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↑ヘッドを襟口に挿し込む。


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(2)Tamiya 35320-3 Feldgendarme A

このフィギュアも、極めてパーツの合いが良好で、すらりすらりと組めますけれど、、
インジェクションプラスチックパーツとして成型された冊子はやはりいただけないので、
自作の紙によるミニチュア冊子や雑誌や書籍を持たせたいところです。
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↑パーツを切り離す。
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↑デザインナイフで整形。
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↑デザインナイフでパーティングラインを削る。
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↑デザインナイフでズボン内側の縫い目を彫る。
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↑流し込み接着剤で組む。
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↑袖口の開口。0.8mmでまず開口。
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↑1.5mmで開口。
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↑デザインナイフで整える。
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↑0.8mm真鍮線で手に軸を打つ。
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↑襟口の開口。0.8mmで開口。
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↑3.0mmで開口してデザインナイフで整える。
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↑流し込み接着剤で弾薬ポーチを接着。
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↑流し込み接着剤で腕を接着。
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↑流し込み接着材で雑嚢を接着。
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↑1/35 LIFEの横幅に合うように手を調整。
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↑0.8mm真鍮線で軸打ちしたヘッドを挿し込む。
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"Hornetized" Ver.
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↑箱側面のシェパードに強烈なデジャヴを感じると思って調べたら、35128(1984.8)の裏に印刷されている図と同じものであった。
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↑OKER BRANDの袋。
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↑交通整理バトンの赤丸部は直径3mmであった。
ゆえに、1/350 伊-400潜水艦(78019)のデカールが丁度良いサイズである。
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by tokyomonogatari | 2011-07-10 02:26 | Germany | Comments(2)
Commented by sinya9k at 2011-07-10 09:13 x
このセット、まだ現物を拝見していないのですが、皺の感じなど今までのICM臭さが無いように思うのですが、いかがでしょうか。
また、顔が俳優っぽいというか、かのズベズダの現用ソ連戦車兵セットに見られる3Dスキャン顔を彷彿させるところがあると感じました。
あまりにもくっきりとしたMを描く唇が戯画的ではありますが、私は好きです。
Commented by tokyomonogatari at 2011-07-10 19:36
35298をスタイリッシュにした造形、という感じを私は受けています。
過去のICMよりも垢抜けながらも、ICM的な造形をキッチリ踏襲してもいる、という感じがします。
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