Master Box 3557 [ドイツ空軍女性補助員、或いはミリタリーフィギュア=ホモソーシャル性の緩やかな解体]

Master Box 3557, "Women at War: Germany, Luftwaffe Helferinnen"

ウクライナのMaster Box社は自覚的にミリタリーフィギュアのホモソーシャル性の解体を、
狙っているという感がかつてはあったが、Women at Warシリーズは結局二作出たのみで、
少なくとも今日まで同シリーズの次回作の予告を見る事が出来ず、
最近の同社フィギュアで女性はホモソーシャルの牙城たる軍隊に籍を置かず、民間人として登場するようになった。

現状最新作の女性兵士フィギュアは、1/32 リーリャ・リトヴァクであるが、
スターリングラードの白百合の名に相応しく、花を持つポオズが与えられ、あのキットの中で唯一の女性として、
明らかに女性性が強調された形で表象されていた。

リーリャ・リトヴァクに"性別的分業"のポオズが与えられるひとつ前の、女性兵士が登場したキットにして、
現状Woman at Warシリーズ最新作がMaster Box 3557である。
1/35ミリタリーフィギュアにおいては、女性には看護師か補助員の職務が与えられると同時に、
フィギュアセットの説話的主題の中心から外れた位置に置かれる事が多い*。
しかも、笑顔×胸ボリュームの強調、という男性的幻想のある種ポルノグラフィックな表象**がなされる事が多く、
極端な事例では、"チクポチ描写"までも与えられているのである。
そのような状況にあって、Master Box 3557の登場は衝撃的であった。
私は同社HPの新製品情報の画像を眺め、喫煙する女性がインジェクションフィギュアで表象されたのは史上初である、などと言う事よりも、
女性のタバコに男性が火をつけるそのあり方に、感動して、いよいよミリタリーフィギュアにおける旧時代的な男性中心主義が打破される時代が来たっ。
革命的だっ、とガッツポーズをしてしまったのである***。

より積極的な男性中心主義の打破が今後行われるのではないか、例えば、
ソヴィエト軍女性兵士が、ドイツ軍男性兵士捕虜の尻を蹴っ飛ばす位のポオズを、Master Box社は与えてくるのではなかろうか、
と期待的予想をしていたのであるが、前述のようにWoman at Warシリーズは次回作の予定が無い模様。
先日発売された、Master Box 3561で男子校的表象が行われていたりするのは、かつてMaster Box社が行っていたホモソーシャル性の緩やかな解体へのバックラッシュなのかもしれない、
などと、Master Box社のフィギュログラフィーを眺めて、私は思ったのである。

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(註)
*無論、Master Box社の女性中心的フィギュア以外にも例外はある。例えばICM 35551
**造形的技術が追い付かず、フィギュア本体にガッカリさせられた事例も多数存在するが、少なくとも箱絵上では、総じて男性的視点で好ましい女性像になっている。
***タバコに火をつける男性兵士が二人から選択可能であり、一方の男性兵士は箱絵からあっさり捨象されているという扱われ方も興味深い。
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グレートデンを組む

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↑近年稀に見る隙間が。
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↑クランプして無理矢理接着。
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↑Tamiya 35320のシェパードと体躯比較。
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by tokyomonogatari | 2011-07-21 01:30 | Germany | Comments(4)
Commented by sinya9k at 2011-07-22 00:35 x
ホスト的煙草着火シーンも印象的ですが、もう御一方の「ドーベルマンを御している」というポジションから私は「マチズモへの威嚇(あるいは支配)」を感じます。おサルで気を引く若者に愛想を振りまくいわゆる「女性」を武器にしているUS女子との対比としてこのセットがあるのも、なにやら意味が在るのやら無いのやら。
Commented by tokyomonogatari at 2011-07-22 01:22
ドーベルマンというよりも、おそらくはグレートデンを御している左の女性には、
箱絵で首輪を掴んでいるポオズが与えられており、マッチョな男性の首根っこを掴んでいる女性のイメージが含意されているという感が確かにあります。
或いは、一人の男を捨象しつつ、犬はキッチリ描かれているのに対しては、
男は犬以下の存在価値である、という過激な読みも可能だと思いますし、
Master Box社のフィギュアをディレクションしている人物(おそらくは男性)は、
女性恐怖とホモソーシャルへの憧憬の間を行き来しているようにも思えます。

実は、グレートデンと女性像から、カリオストロのクラリスを連想した私は、
犬の首根っこを押さえつける体躯の良い女性を描くことによって、
クラリス・コンプレックスをある意味批判している図像なのではないか、
とも読んでいたのですが、文章が全くまとまりませんでした。
Commented by sinya9k at 2011-07-22 18:00 x
これはしたり、グレートデンでありました。

>女性恐怖とホモソーシャルへの憧憬の間を行き来している

そう考えると、アノくんずほぐれつ巴投げセットあたりは後者側への目盛りが振り切ってるようにも見えてきてしまいますね。
Commented by tokyomonogatari at 2011-07-23 02:03
「くんずほぐれつ巴投げセット」を、「ロンメル元帥と男たち」と一緒に買うか否か悩みぬいて、
結局、買わずに模型店を出ました。
「くんずほぐれつ」や、Master Box早期のドイツ兵×ソヴィエト兵ものは、
私にはミリタリスティックな香りが強すぎて、ホモソーシャル的芳香を今ひとつ感ずることができず、
今ひとつ購入意欲が湧きませんでした。
部活的に言えば、試合的なモノよりも、ロッカー室や放課後のファーストフード店における、
平和的オッスオッスなあり方にこそ、私は惹きつけられるようです。
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