Tamiya 35256 [ドイツ冬季装備歩兵、或いは特権的衣装としてのオーバーコート]

戯れに、Tamiya MM史をオーバーコートに身を包んだドイツ軍兵士に注目して眺めてみると*、
その衣装をまとった兵士にはある種の新奇/特権性が付与されている事が覗える。

MM史上初のオーバーコート・ドイツ兵は、35010(1971.7)の四人組のうちの指差し将校である。
彼は傍らのM36野戦服の兵士とともに、MM史上で初めてインデックス・ポオズが与えられた事例である。**

次に登場したのが35016(1972.6)で「BMWサイドカー」の傍らを歩く兵士であるが、
彼らはコートを着て歩くポオズが与えられている非戦闘時のドイツ兵としては、未だにMM史上唯一の存在である。

35073(1975.10)では、MM史上唯一、望遠鏡を覗く身振りが与えられた高級将校にコートが与えられた。

35113(1979.9)では、MM史上初めて、特定の個人=ロンメル元帥がフィギュア化された。
35113のロンメル元帥御一行は模型史家が黄金期とする70年代のMMシーンの最後に登場したドイツ軍フィギュアでもある。
ロンメル元帥は35118(1980.9)としても登場しているが、ロンメル元帥のみが特権的衣装=コート姿で再登場している点にも注目しておきたい。

35200(1996.2)のコートの彼は、襟元を締めるポオズが与えられた唯一の存在である。

35212(1996.12)ではコートを着た兵士は二人存在する。そのうちの一人は、防寒アノラックを重ね着してコートを着たMM初の事例であり、
もう一人はしゃがむポオズが初めて与えられたコートスタイルのドイツ兵であった***。

35256(2002.11)はコートを着て戦闘的なポオズが与えられている唯一の存在である事は、
過去のコートスタイルの事例を振り返って来た今にあっては、もはや指摘するまでの事でもなかろう。

最新のコートスタイルのドイツ兵は、35298(2009.3)である。
彼は"東欧時代"への突入、という一大転回点となったフィギュアセットの中のひとりでありながら、
70年代=35010的な身振りが与えられていたという、懐古的かつ新奇な表れ方もまた興味深いものであるが、
注目すべきは、Tamiya社1/35史上初の「中の脚が独立した2パーツとしてキチンと存在している上から、前後からコートの裾パーツを合わせる」
Dragon的と形容してもフィギュア史的文脈では差し支えなかろうスタイルが初めて採られていることである。
なお、限定キットとして1/16フィギュアからの1/35化がなされたコート姿のドイツ兵の唯一の事例として、
89641がある。こちらもまたキチンとコートの裾をまとう形式のパーツ分割が行われているが、
ブーツ部が割られている点にも注目であり、無論、ブーツが割られているコートスタイルのドイツ兵の事例として唯一の存在である。

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(註)
*この議論では、オートバイ兵用コートを含んでいない。通常のオーバーコートを対象としている。
言うまでもなく、バイアスをかけてフィギュアを眺め、思い通りの帰結に持ち込む、
戯れの議論であって、この分析はフィギュア史研究において何ら意味を持たないし、持つべきでない。

**なお、このMM史上初の指差しポオズ付与について、
『モリナガ・ヨウのプラモ迷宮日記 第1集[フィールドグレイの巻]』(大日本絵画、2011)の表紙では、「はじめて指差し兵が地上におりる」と記述されている。
ここで一応確認しておきたいのは、「地上に」と限定されている意味についてである。
無論、これは(1971.7)及び35011(1971.9)以前に、インデックスポオズをとりつつキューポラに収まるフィギュアとして、1/25 T-34の戦車兵が1969年の時点で既に存在していたため、
或いは、1/35の指差しアメリカ軍戦車兵が、モーターライズ版M42ダスターの付属フィギュア(1970.5)及び、MMシリーズ初のアメリカ軍フィギュアである35004(1970.7)が、
戦車に乗せる事をほぼ前提としてリリースされていたためであろう。
なお、T-34の戦車兵は、1/25の戦車に初めて付属したフィギュアであった。(田宮模型編『田宮模型全仕事1』(文春ネスコ、2000), P.152)

***1996年のMMシリーズのリリースは、35200(1996.2)のヴェスペ(の冬の自走砲兵)に始まり、35212(1996.2)の冬季装備のドイツ兵に終わる。
35209(1996.9)のⅣ号戦車H型では、現状唯一の防寒アノラックを着て戦車のキューポラに収まる戦車兵がフィギュアとして与えられている。
この冬季傾斜ぶりを見るに、96年を狭義の「冬の時代」と呼称して差し支えないと私は思う。
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Tamiya 35256を眺めておこう。
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↑拳銃、そして柄付手榴弾の手との一体成型は、35012(1971.9)以来31年ぶりであった。
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by tokyomonogatari | 2011-09-09 02:32 | Germany | Comments(3)
Commented by モリナガ at 2011-09-10 09:43 x
こんにちは。T34指差し兵!いましたねえ。自分としては昔のグレイハウンド兵士が念頭にありました。松井さんのご本では1966~だそうです。
コート進撃兵辺りのタミヤ人形も顔に個性がありますね。うまい表現が見つからないのですが、口を左右に引っ張った、やや幼さの残る「へへん」「オイラだぜ」顔といいましょうか…
Commented by tokyomonogatari at 2011-09-11 18:59
なるほど、グレイハウンドのアメリカ軍兵士の彼でしたか。
改めて眺めてみますと、彼の身振りは、それ以降の指差しフィギュアの直立性=上半身のみの指差し、
と比較した時に、明らかに全身で指をさしている印象で、
指差し身振り史最初期にして、それ以降のものと隔絶した異端さがあって興味深く感ぜられます。

平野氏原型のカリウス氏フィギュアが、全身を弓なりにしつつ指を挿していた時、MM史上革命的だっ!
などと思ってしまったのですが、1966年の時点で全身指差しの身体が存在していた、というのに気付かされました。

ゼロ年代半ばのやや幼さの残る顔、という指摘と、
90年代中期から末期のフィギュアが、"翁的"と指摘される(ex.35192)こともままある事を考え併せると、
若返り/アンチエイジングの傾向が、ゼロ年代MMフィギュアに見られたとも捉える事が出来そうで、
ちょっとそのあたりのヘッド造形変遷史も俯瞰しておきたくなりました。
Commented by モリナガ at 2011-09-11 23:04 x
砲兵セット将校の指差に緩やかな腰の回転を見るかどうかで、歴史解釈が変わりそうですな!
90年代のタミヤ兵のほうれい線は戦場老け込みというより、ほっぺたがたぷたぷしている印象でした。だからこそ37ミリ砲つきクルッププロッツェ兵系列顔の幼さが、印象に残ったのかもしれません。
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