1/35 メガネ概論(書き途中)

1/35 Glasses Studies

1/35メガネは過去、The Show Modelling社やAcu Stion社やPassion Models社やFine Molds社などからエッチングパーツの一部ないし全部として供給され、
Dragon 6020Tristar 35006ではインジェクションキットに付属する形でひとつ或いはふたつのエッチングメガネが与えられた。
金属素材以外では、紙創り社のレーザーカット紙製メガネの事例が存在する。

しかし、供給史を振り返ることはさして重要ではなく、小さすぎるか大きすぎるか細すぎるか太すぎるか、
の傾向がある他のものに比べて、Tristar 35006こそが最高傑作であって、
サイズ的にも汎用性が高く、太さ的にも適度、素材の厚み、硬さも適度である。

平野義高氏の造形的フレイヴァーをインジェクション=マルチプルな身体に刻むこと、に模型史上最も成功、
インジェクションフィギュア史において最も高みに到達したゼロ年代平野氏原型時代のTristar社のフィギュアに、
この至高のエッチングが名門Aber社から供給されているとなれば、Tristar 35006は必携以外の何物でもなく、最低限3個は購入しておくべきキットであること確実。

本稿では模型慕情の過去記事を集成、Tristar 35006-Glassesの実際の工作、活用例をまとめるとともに、
至高のメガネ、Tristar 35006-Glassesを敢えて用いないオルタナティヴなメガネ表現として、銅線を用いてメガネを自作する事例についても触れる。

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Chap.1
Tristar 35006-Glasses



(1-1)Tristar 35006-Glassesとは何か

インジェクションミリタリーフィギュア史におけるゼロ年代最大の衝撃は、香港Tristar社の登場であった。
平野義高氏が原型を製作したフィギュアをインジェクション=マルチプルな身体に刻んだメーカーとしては、
Tamiya社、Fine Molds社、Hasegawa社、Dragon社、Tristar社があるが、
ゼロ年代のTristar社以上に、平野氏の造形的フレイヴァーを補足しつつインジェクションフィギュア化することに成功した事例は存在しない。

Tristar社の珠玉の平野氏原型フィギュアの中にあっても、その平野氏フレイヴァーが極めて強く発散されているのがTristar 35006である。
苦みのある表情の顔や、口をかわいらしく開けた―より唇を突き出した表情は「平野氏的キス顔」と称揚される愛らしさである―表情や、
細身のブーツや、平たい胸板感が、平野氏の造形以外の何物でもないことを雄弁に語っている傑作のTristar 35006には、
メガネをかけた副官が存在し、いかにも副官らしい真面目なM36軍服の着こなしと立ち方でまとめられている。

彼に与えられたのが、Tristar 35006-glassesであり、銘記によればAber社によって製造されたものである。

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(1-2)フレームの形状加工

Tristar 35006-Glassesのフレームの形状*を円から楕円に変更する過程。

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↑ピンセットでギリギリ潰して楕円にする。
これでは左右対称の精度が出ないので、今回は爪楊枝を楕円に削ったものを治具に左右の形状を整えてみた。
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↑治具で修正した楕円フレーム。

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(註)
*なお、ドイツ軍が支給した軍用メガネ Dienst-Brille のフレーム形状は、円が少し楕円に近づいた形状であり、レンズ直径は3.7cmである。
菊月俊之 『ドイツ軍ユニフォーム&個人装備マニュアル』(グリーンアロー出版 2002) P.65参照。
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(1-3)レンズ表現


(1-3-a)木工用ボンド・マクハリ法(非推奨)

木工用ボンドを適量レンズの内側に盛り、乾燥硬化させる方法。
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↑やや白濁。

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↑角度を付けると、よりレンズの濁りが露わになる感あり。





(1-3-b)マニキュア・マクハリ法(推奨)

マニキュアのトップコートを適量フレームの内側に盛り、揮発硬化させる方法を、マニキュア・マクハリ法とここでは呼称する。

(1-3-b-1)丸フレームへのマクハリ

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↑プライマーサーフェイサーを薄く吹いた上に、タミヤアクリルのジャーマングレイをエアブラシで薄く吹く。
フラットブラックだと強すぎる。「黒」はジャーマングレイで十分。
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↑塗料乾燥の後、マニキュアのトップコートを爪楊枝先端に適量盛り、裏面=顔に近接する側のフレームに膜を張る。
マニキュアはエナメル系だから、フレーム塗装のアクリル塗料が侵されまいと踏んでも、
実際やってみると若干侵食される感があるので、裏面から張る方が良い。
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↑光の反射っぷり。
「マニキュアで膜を張る」というのは、奥様方のコサージュ作りで度々用いられる技法。
透明度が高く、ツヤがあってある程度丈夫な膜が得られるので、1/35メガネの膜表現にも中々ベター。





(1-3-b-2)楕円フレームへのマクハリ
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↑Tristar 35006 付属エッチング丸メガネを、ピンセット先で緩く潰して楕円にしたもの。
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↑プライマーサーフェイサーを吹く。
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↑タミヤアクリルのジャーマングレイをふわりとエアブラシで吹き付け、
木材片にレンズ部を外側に出してマスキングテープで緩く固定し、マニキュアトップコートで膜を張る。
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↑(悪い例) 
気泡を巻き込んでしまう事があるものの、粘度が高いと起こりやすいと見え、除光液添加で抑えられる。
気泡が出てしまったら、キッチリこのまま硬化させてからパリっと剥がす。
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↑(良い例) 
気泡を巻き込まず、後ろのマスキングテープの毛羽立ちも像があまり歪まずに見える適度な厚み。
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↑メガネ使用例。
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今回使用したマニキュアトップコート。
ドゥ・ベスト社の「ラパンセ トップコート11ml」 105円

成分として、
酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロパノール、(酢酸/酪酸)セルロース、安息香酸スクロース、
(フタル酸/トリメリト酸/グリコールズ)コポリマー、カンフル
が挙げられている。


(1-3-b-3)デカールを丸く打ち抜く方法(参考)

デカールでレンズを再現する際の参考。
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↑デカール余白部にビーディングツール22号(最大)を押し付ける。
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↑デカールを水に浸す。
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↑デカールの本体をずらして、押し付け丸部分を残す。
これで9割方残る。
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↑抜かれた方はこんな感じ。
ビーディングツールの押し付けが強すぎると、抜ける丸の外周がひっぱられて変形する。

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Chap.2
1/35メガネの自作



(2-1)フチ無し丸メガネの製作

1/35サイズで、坪内逍遥博士のフチ無し丸メガネを表現する。
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↑レンズ部は透明プラスチック板の1.5mm円ポンチによる打ち抜き。
フレーム部は伸ばしランナーを黒く塗ったもので表現。
フレームとレンズの接合は、寸法を計測して行うよりも、長めに切り出して現物合わせの方がベター。
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(2-2)丸メガネのフレーム製作とレンズ表現

(2-2-1)0.23mm径銅線による丸メガネ製作事例

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↑ヘッドを塗る。

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↑塗り終わり。

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↑メガネのフレームを作る。まず、丸い部分は1.0mm真鍮線に0.23mm銅線を巻きつけて。

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↑巻いたものを芯から抜いて、内側からデザインナイフでカットして、内径1.0mmのリングを得る。

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↑リングの形を整えて、鼻当てブリッジを瞬間接着。

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↑鼻に瞬間接着。耳にかかるツルは黒色の伸ばしランナーを接着。

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↑金属プライマー筆塗りのあと、フレームに着色。

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↑マニキュアのトップコートを爪楊枝で盛って、レンズを表現。

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(2-2-2)0.12mm径銅線による丸メガネ製作事例

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↑缶サフを吹く。タミヤの仕上げ用ライトグレイ。
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↑ミディアムブルーで瞳を入れて、フラットブラウンを希釈して暗部に流す。
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↑フラットフレッシュ+フラットホワイトで肌の下地を塗る。

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↑フラットフレッシュ+フラットホワイト+フラットレッドで赤みを入れて、
明部にはフラットホワイト+フラットフレッシュを塗る。
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↑ベレー帽を塗る。フラットブラック+ダークグレー+フラットベース。
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↑丸メガネを作る。0.12mm銅線の「巻き線カット法」で内径1.0mmのリングを得る。

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↑同じく銅線でメガネフレーム状にする。
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↑プライマーを塗布。タミヤペイントマーカーのクロームシルバーで銀縁メガネにする。
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↑マニキュアのトップコートで膜を張ってレンズを入れる。

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(余録)プラ材を用いた1/48メガネの製作

プラ棒スライス・ビーディングツール打ち抜き法で得る小リングと伸ばしランナーで1/48メガネを作ってみたもの。

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↑リングは0.75㎜プラ棒スライスの4番ビーディングツール打ち抜き。
ツルは伸ばしランナー。

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(参考)

銅像におけるメガネの一体化表現

小野梓先生胸像 (小野梓記念講堂)
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(FuMa氏の研究(2011.12.23)での拙稿参照指示に対する追記)

1/35メガネレンズ表現としての紫外線硬化透明樹脂の活用の研究(FuMa氏,2011.12.23)
で、同スケールのメガネ事情については拙稿を参照せよとあり、
ここでちょっと1/35メガネ表現小史の私観をほんの少し述べさせていただいて、拙稿の内容不足を補いたいと思うのです。

メガネ表現について書かれた初期の事例で、おそらくは最も有名なテクストは、
タミヤジュニアニュース特集号の「ちょっとだけヨの改造」の、
エナメル線の(重なりながらの)"一筆書き"によるフレームに、タミヤセメントでレンズの膜を張る方法であろうと思います。

金属線の(重なりながらの)"一筆書き"によるフレームの製作は、ゼロ年代に製作された情景の傑作中の傑作、
アメリカ軍情景作品史を編むならば掲載必須の、ながしま氏の"Little Jazz"でも用いられていて、
現在でもその技法は輝きを失っていません。

レンズ表現について、私が人から直接口頭で聞いた技法として初めてのものは、エポキシ接着剤で膜を張るというものなのですが、
私はどうしたものかそれを用いずに、金属線でフレームを作って内側に膜を張ってコサージュを製作する方法を参考に、
マニキュアを用いたのでした。

ゼロ年代にレンズ表現の研究を最も押し進めたのはコタツガ氏です。
コタツガ氏には2008.2.3記事で、拙稿に少し触れていただいておりますが、
同時期の記事で先行研究についても示されており、その後のレンズ表現の攻究も含めまして、現在最重要の必読テクストだと思います。

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by tokyomonogatari | 2012-03-25 20:07 | ◎小道具 | Comments(0)
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